薬師如来(やくしにょらい)(YakushiNyorai)

薬師如来(やくしにょらい)は、仏像における如来の一つ

正式名:薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)

別称:大医王仏(だいいおうぶつ)、医王善逝(いおうぜんぜい)、医王如来(いおうにょらい)

特徴:薬壺、または、丸薬の入った鉢を持つ

ご利益:病気治癒(特に目病)、健康長寿、災難除去、安産祈願、現世利益

 薬師如来(やくしにょらい)は、仏像における如来の一つ

 東方にある瑠璃光浄土(るりこうじょうど)に住んでおり、東方浄瑠璃世界の教主とされる
 西方極楽浄土には、阿弥陀如来が住んでおられる

 病気を治して衣食住を満たすなどの「十二の誓願」を立てられた、生きている間に願いを叶えてくれる仏さん
 特に、眼病の平癒にご利益があるといわれる

 阿弥陀如来や他の如来のように死んだ後に安らぎを与えるのではなく、現世でご利益を与えてくれるといわれる

【薬師如来】

 正式名は、薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)

 <代表的な経典>
  「薬師瑠璃光如来本願功徳経(薬師経)」650年(皇紀1310)白雉元年の玄奘訳
  「薬師瑠璃光七佛本願功徳経(七仏薬師経)」707年(皇紀1367)慶雲4年の義浄訳
  「仏説薬師如来本願経」615年(皇紀1275)推古天皇23年の達磨笈多訳
 などに薬師如来が説かれている

 薬師本願功徳経では、
 薬師如来は、東方浄瑠璃世界(瑠璃光浄土とも称される)の教主
 まだ修行中の菩薩だったときに12の大願をして、この世における人々の疾病を治癒して寿命を伸ばし、
災禍をなくして、貧しい人には衣食を与え、仏行を行えば瑠璃光をもって病苦を救うなどの誓いをしたといわれる

 <密教経典>
 「薬師瑠璃光如来消災除難念誦儀軌」
 「薬師七仏供養儀軌如意王経」
 などに薬師如来が説かれている


 <姿(像容)>
 髪型は、螺髪(らほつ)と称される髪の毛が右巻きの巻き貝のようになった固まりが多くさんある
 衣服は、全身を一枚の布だけで覆うシンプルな姿

 右手は施無畏印、左手は与願印で、その左手の掌の上に薬壷を乗せておられる

 左手に、薬壺(やっこ)か丸薬の入った鉢を持っており、右手の薬指を前に出している
 薬壺の中は、応病与薬の法薬といわれ、苦を抜き薬を与えてくれるといわる

 他の装飾品等は持たない
 如来で持物(じもつ)を持つのは薬師如来だけ

 奈良時代までの像は薬壺を持たない場合が多く釈迦如来と区別がつきにくい像も多い

 平安時代以前は、坐像が多かったが、
 次第に、衆生(特に、この世の人々)の依頼で、直ちに往診していただけるよう立像が増えていった


 <薬師三尊>
 薬師如来の力を手助けする日光菩薩と月光菩薩を脇侍として、三尊として祀られることが多い

 薬師如来のいる東方薬師浄土からは、太陽や月が現世に送り込まれるといわれる


 <七仏薬師>
 「七仏薬師経」によって、7体の薬師如来を祀って、無病息災・増益を祈願する修法の本尊とされることもある

 光背(光り輝く後光を表したもの)に、衆生救済の力を補うための化仏(如来の分身)として、小さな6体の薬師如来がおられる場合もある

 薬師如来を主体とした七尊の仏さんと、住んでおられる仏国土が説かれることがある
    光勝国:  善名称吉祥王如来(ぜんみょうしょうきちじょうおうにょらい)
    妙宝国:  宝月智厳光音自在王如来(ほうがつちごんこうおんじざいおうにょらい)
    円満香積国:金色宝光妙行成就王如来(こんじきほうこうみょうぎょうじょうじゅおうにょらい)
    無憂国:  無憂最勝吉祥王如来(むうさいしょうきちじょうおうにょらい)
    法幢国:  法海雲雷音如来(ほうかいうんらいおんにょらい)
    善住法海国:法海勝慧遊戯神通如来(ほうかいしょうえゆげじんつうにょらい)
    浄瑠璃国: 薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)

 天台宗系の密教では、慈覚大師 円仁が創始した七仏薬師法が、息災・安産をもたらすとされ、祈願が行われる


 <眷属>
 十二神将(じゅにしんしょう)を従えている

 一日24時間を、一神将が2時間交代で、常に衆生(全ての生き物)に目を向けて、衆生を守護しているといわれる


 <ご利益>
 病気治癒(特に眼病の平癒)、健康長寿、災難除去、安産祈願、現世利益


 <真言>
 オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ


 <縁日>
 毎月8日は薬師如来の縁日とされる
 この日にお参りすると、ご利益が割り増しになるとわれる


 <十二誓願>
 薬師如来は、まだ修行中の菩薩だったときに、自分が仏になったら成し遂げるという12の誓願をたてた

  第1大願 光明普照 自らの光で三千世界を照らし、すべての人々を悟りに導いて仏にする
  第2大願 随意成弁 瑠璃の光を通じて、人々が善い行いをするように導き仏性を目覚めさせる
  第3大願 施無尽仏 悟りを得るために、あらゆる必要なものを施す
  第4大願 安心大乗 世の中の外道を正して、すべての人々を正しい教えへと導く
  第5大願 具戒清浄 戒律を破ってしまった者も、善行を促し戒律を守れるよう助ける
  第6大願 諸根具足 迷いを生じる原因を消滅させ、生まれつきの障害・病気・身体的苦痛を癒やす

  第7大願 除病安楽(じょびょうあんらく)
    広く人々のどんな病気も治し延命するだけでなく、精神的な苦痛までも取り除く
    薬師如来への信仰として、最も信仰された誓願

  第8大願 転女得仏 女性が成仏するために、男性への転生を望む女性を助ける
  第9大願 安心正見 すべての精神的苦痛や煩悩、邪悪な感情を浄化できるよう助ける
  第10大願 苦悩解脱 災難や、苦悩、重圧に苦しむ人々が解き放たれるべく助ける
  第11大願 飲食安楽 餓えや渇きに苦しむことがないようにする
  第12大願 美衣満足 寒さや虫刺されに悩まされる人々に衣類を施す


【ゆかりの地】

 平安時代初期
 延暦寺根本中堂の本尊として薬師如来が祀られ、天台宗系寺院では、薬師如来像が多く造像された

 <因幡薬師堂 平等寺
 本尊の木造 薬師如来立像(重要文化財)
 日本三如来の一つ清凉寺釈迦如来像・善光寺(長野県)の阿弥陀如来像
 「因幡薬師(いなばやくし)」「癌封じの薬師如来」と称される


 <醍醐寺
 本尊の木造 薬師如来像および両脇侍像(国宝)
 平安時代の作

 木造 薬師如来像および両脇侍像(重要文化財)
 金堂の中央に醍醐寺の本尊の薬師如来坐像、脇侍に日光菩薩・月光菩薩が安置されている


 <神護寺
 金堂の本尊の木造 薬師如来立像(国宝)
 唇に朱を、眉と瞳などに墨を塗るほかは彩色などを施されていない素木仕上げの像
 衣文などに平安時代初期特有の様式が見られ、平安時代初期に仏教信徒により造立されたといわれる

 薬師如来坐像(重要文化財)も祀られている


 <仁和寺
 霊明殿に、秘仏の本尊 木造薬師如来坐像(国宝)が安置されている
 平安時代末期、覚行法親王(白河天皇の皇子)の発願により仏師の円勢と長円が造像したもの
 本体の像高10.7cm、光背と台座を含めても24cmほどの小像
 光背には、七仏薬師像と日光・月光菩薩、台座には前後左右各面に3体ずつの十二神将を表わす
 白檀材(びゃくだんざい)で造られている


 <延暦寺
 根本中堂(国宝)の中央の厨子には、最澄の自作といわれる秘仏の本尊 薬師如来立像が安置されている
 本尊の厨子前の釣灯籠は、創建以来、絶やしたことがない「不滅の法灯」が灯っている
 護摩壇があり、毎日、薬師護摩が焚かれている


 <法界寺
 本尊の薬師如来立像(重要文化財)
 胎内には、日野家に代々伝わる伝教大師 最澄自作といわれる三寸の薬師像が納入されている
 胎内仏ということで、安産祈願・子授け祈願などのご利益があり、祈願すると女性のお乳の出がよくなるといわれ、
「乳薬師」と称されて信仰されている


 <神蔵寺
 薬師堂(東方閣)の中央の厨子に、本尊の薬師如来坐像(重要文化財)と日光・月光菩薩が安置されている
 延暦寺根本中堂の薬師如来と同木で作られたといわれ、平安時代末期の様式を伝える


 <浄瑠璃寺
 三重塔(国宝)に東方本尊の薬師如来坐像(重要文化財)が西向きに安置されている


 <永観堂
 絹本著色 薬師如来像(重要文化財)が祀られている

 <円隆寺
 本尊左脇侍に薬師如来坐像(重要文化財)が祀られている

 <高山寺
 薬師如来坐像(重要文化財)が祀られている
 奈良時代末期の作

 <来迎院
 本堂に、本尊(重要文化財)として、木造 薬師如来坐像、木造 阿弥陀如来坐像、木造 釈迦如来坐像の三尊仏が祀られている
 平安時代の木像漆箔寄木造
 やわらかい曲線と円満な表情が特徴とされる

 <六道珍皇寺
 薬師堂に本尊の木像薬師如来坐像(重要文化財)が祀られている
 伝教大師 最澄の作

 <六波羅蜜寺
 薬師如来坐像(重要文化財)が祀られている
 平安時代の天台様式の作

 <勝持寺
 瑠璃光殿(るりこうでん)に、本尊 木造 薬師如来坐像(重要文化財)が祀られている
 像高約85cmで、鎌倉時代の作

 像高9.1cmの木造 薬師如来坐像(重要文化財)は、光背に、七仏薬師と十二神将像がある精緻なもの
 平安時代前期の作


 <東寺
 金堂の本尊の薬師三尊像(重要文化財)
 薬師如来座像を中心に、向かって右側に日光菩薩(重要文化財)、左側に月光菩薩(重要文化財)が安置される
 光背上には、七躰の化仏を配して、七仏薬師を表す
 本尊の台座の周りには「十二神将像(重要文化財)」が配置されている
 これらは、大仏師 康正の作といわれ、密教的な薬師信仰の形式
 中尊の像は、高2.9mに達する巨像で、日本の仏教彫刻衰退期である桃山時代における佳作といわれる


 <宝林寺
 三如来坐像(3躰とも重要文化財)として祀られている
 平安時代の作


 <大光寺
 薬師堂の本尊 薬師如来像(桃山時代の作)
 「手接の薬師」と称され、耳の病や安産祈願のご利益があるといわれる

 本堂の東側庭内、墓地の手前に四面石仏(鎌倉時代後期の作)が安置されている
 四面に舟形光背が彫られ、蓮華座に坐す約40cmの如来形四方仏が厚肉彫りされている


 <永福寺
 親孝行の僧侶の故事が由来の「蛸薬師如来」と称される病気平癒のご利益がある薬師如来が祀られている


 <願行寺
 水辺より現われたといわれる「浜の薬師」と称される薬師如来像が祀られている


 <蓮華寺
 境内の庭に丈六の大きな石造 五智如来像(釈迦如来阿弥陀如来大日如来・宝生如来・薬師如来)が安置されている
 智恵の祈願仏であり、学業の守護尊として信仰されている


 <こぬか薬師
 本尊 薬師如来像が祀られている
 伝教大師 最澄が「一刀三礼の礼を尽くして(1つ刻むたびに3回拝んで)」彫った七尊体の一体


 <壬生寺
 本尊の歯薬師如来は、京都十二薬師第四番霊場


 <西光寺
 弘法大師 空海が一刀三礼し刻んだ薬師如来像が祀られている
 寅の日の寅の刻に開眼したといわれ「寅薬師」と称される寅年生まれの守護仏


 <三千院
 宸殿の中の間には、本尊の伝教大師 最澄作の秘仏 薬師瑠璃光如来像が祀られている


 <雲龍院
 薬師三尊像として、本尊の薬師如来坐像と、脇待の日光菩薩立像・月光菩薩立像が祀られている
 薬師如来は「瑠璃光王」や「大医王尊」などとも称され、病気平癒など現世利益として信仰されている


 本尊などで薬師如来、薬師如来三尊などが祀られている寺院

 <穴太寺
 <安楽寿院
 <大覚寺
 <大興寺
 <法観寺
 <今熊野観音寺
 <神光院
 <神應寺
 <地蔵寺
 <城興寺
 <桂春院
 <久昌院
 <三室戸寺
 <西芳寺
 <石峰寺
 <正法寺
 <青蓮院
 <天寧寺
 <東福寺
 <善峯寺
 <養源院
 <随心院


 本尊などで薬師如来などが祀られている神社

 <石清水八幡宮
 <石田神社
 <吉祥院天満宮


 <当尾
 この地域には、多くの石仏が残されている
 数枚の板石の石龕の中に、薬壷を持った薬師如来の石仏が祀られており「穴薬師」といわれる
 耳病にご利益があるといわれている

【その他】

 <出水の七不思議
 日限薬師(ひぎりやくし)(地福寺)の、鷹司公の重病を治癒したといわれる本尊の薬師如来
 穴の開いた小石を奉納し、21日間と日を限って参拝すると、耳が聞こえないのが治るといわれる
 自然に穴が開いた石でないとご利益がないといわれる
 境内の井戸水は、不老長寿のご利益があるといわれる

 <素戔嗚尊(牛頭天王)>
 八坂神社の祭神
 インドの釈迦の生誕地にちなむ祇園精舎の守護神とされ、神仏習合で、薬師如来の垂迹(すいしゃく)とされる

 <住吉三神
 神仏習合により、それぞれ仏の化身とされる
   薬師如来(底筒之男神)
   阿弥陀如来(中筒之男神)
   大日如来(上筒之男神)

 <浄瑠璃
 御伽草子の「浄瑠璃十二段草子(浄瑠璃物語)」を語って神仏の功徳を説いたのが由来といわれる
 「浄瑠璃物語」は、矢作(やはぎ)の長者の浄瑠璃御前と牛若丸とのロマンスに、薬師如来などの霊験譚を加えた物語
 この物語の名前から、その後の語り物を「浄瑠璃」と称されるようになった

 <仏教の世界観>
 東方は、太陽が昇る方角で、薬師如来がいる瑠璃光浄土(るりこうじょうど)
 西方は、太陽が沈む方角で、阿弥陀如来がいる西方極楽浄土(さいほうごくらくじょうど)
 北方は、ヒマラヤ山脈のはるか上にあり、弥勒菩薩が修行している兜率天(とそつてん)
 南方は、はるか海のかなたにある、観音菩薩が住んでいる補陀落山(ふだらくさん)


 <三世仏(さんぜぶつ)>
 過去の(命をこの世へ送り出す)薬師如来
 現世の釈迦如来
 来世の(命を浄土に迎えてくれる)阿弥陀如来

 ヒンドゥー教のトリムルティ(三神崇拝)に由来する
 ブラフマー(創造)・ビシュヌ(維持・発展)、シバ(破戒・再生)という三神が順番に輪廻して現世を支配するという考えによる


 <寺院建立の発願>
 平安時代以前の寺院建立の発願は、ほとんどが病気平癒のために建てられた
 特に、薬師如来を本尊として建立された寺院は、個人の病気平癒を祈願したものが多い

 飛鳥時代には、国家鎮護のための寺院建立はなかったといわれる
 (法隆寺の本堂の薬師如来像は、聖徳太子の父親 用明天皇の病気平癒祈願のため
  薬師寺の本尊薬師如来像は、後の持統天皇の病気平癒のため
  新薬師寺の薬師如来像は、聖武天皇の眼病平癒祈願のため)

 現在は、国分寺のほとんどが、薬師如来を本尊としている


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